ビリギャル老い易く学マジやばし・そして伝説へ


たったった、たたたっ、たた

タンポンが取れねぇーーーー!!!!!!!

5時間経ったけんそろそろ取り替えようかなぁーと思ったら

タンポンの紐がねぇの。

探れど探れど、紐がねぇの。

猫の手ってかどっちかっつーと猫っ毛の部類になるけど

ほんと、井上陽水の手も借りたいくらい、探し物が見つからないの。

 

もうね、新手の空き巣にでも入られたかな?って感じ。

現場が現場だけに、無駄に血なまぐさい事件の予感。 

いやはや物騒な世の中になったもんで。

おちおち生理にもなれやしないよ。

 

やぁー、だいたいわたしは日ごろからね、

異性に対してかなりガードの固い女だと自負してたんだけど、

確かにセキュリティって意味ではね、いささか手薄だったかもしれん。

どんくらい手薄だったかっつーと、紙と布が一枚ずつだったわけだけど。 

 

ほんと、唇を奪われるとか貞操を守るとかね、

思えば昔からやたらと女性はメンズの皆様方に対して

盗るか盗られるかっつーラインでしのぎを削りがちだけれども、

まさかタンポンを盗まれるとはなー。

メンスの隙を狙った悪質事件。バーリトゥードな性犯罪。てめぇらの経血は何色だ。

 

いやいやいやいや。

えー?

ちょっとまってー?

このままだったらどうなるのー?

 

紐がなくなって、肝心のタンポン本体はどうしてるかといえば、

これがもうね、当たり前だけど、まったく微動だにしないわけ。

大御所のそれに近い泰然自若とした佇まい。

身体の一部が分断されたってのに、ノーリアクション。

 

なんつーか、授業中ずっと寝たフリしてる不良みたいなもんでね、

ほんとは紐がなくなって、クラス中が騒然となってることに気付いてるくせに、

いや俺、関係ねぇし、どうでもいーし、みたいな目障りなスタンス貫いてるわけ。

一番の当事者の分際で。

ちょっとー、あんたの私物の、なんか、紐?が、誰かにパクられたっぽいよー。

あんたがワルぶってルーズな感じで垂らしてた紐、何者かが持ち去ったっぽいよー。

 

もうね、これでもかっつーくらい微動だにしない。

寝たフリっつーか寝たきりの老人でももっと微動だにするわってくらい、不動。

そうなるとさー、これ、このままだとさぁー、

孤独死とかも俄然、あり得る話になってくるんじゃない?

 

寝たフリしてる不良、そのまま眠るように息を引き取っちゃわない?

期せずして、ウソから出たマコト、みたいになっちゃわない? 

何も出てねーっつーの。血しか出てねーっつーの。

 

いや実際、あの紐はタンポンにとっちゃあ唯一の命綱だったわけだし、

あの紐を手繰って一本釣りする以外サルベージする手段がないだぁー。

ねぇこれやっぱり空き巣の線で捜査を進めるべきじゃないかなー。

窃盗および不法デリケートゾーン侵入と考えたほうが自然じゃない?

やばくない?これやばくない??つってね、一人で超オロオロした。

 

ほんとね、出オチみたいになったし下ネタで申し訳ないから先に言っとくけど、

こっからずっとこんな調子で血まみれの下ネタが続くから。

血まみれで血まみれを洗う熾烈な攻防が繰り広げられるから。

だけん全編ふわーっとした感じで、なるべくコミカルな解釈をしてほしい。

R指定のペイチャンネルってことで、そこらへんは、お覚悟。

 

んで、事態は一刻を争うだぁー。

タンポンのパッケージにはさ、8時間続く吸収力!みたいな、

ほんと、ひとの気も知らないで、悠長な謳い文句が書いてあるわけだけれども、

すでに4時間以上経ってるから、とっくにハーフタイム突入してるわけ。

 

もうね、前半で強烈なオウンゴールが決まっちゃってんの。ボールめりこんでんの。

後半戦でその一点を奪還できさえすれば、万事解決なぁけどー。

もうこの際ハンドとか言ってらんないし。

むしろ、己のハンド以外頼れないし。

 

んで、救いの手っつーか指を差し伸べてみても、

びっくりするくらい届く気配なし。あたりに紐影なし。

懸命の捜索もむなしく、手がかり一つ掴めない。

タンポンのタの字もない。血の字しかない。

 

さらに、このコンゲームをどこで繰り広げてるかっていうと、

JR難波駅の多目的トイレの中なわけ。

えっとね、なんばOCATのバスターミナルから地元まで高速バスが出てるの。

高認試験の合否通知が届いてる実家に帰るべく、発車30分前に難波に着いたの。

んで、駅のトイレでタンポンの交換に漕ぎ着けたまでは計算通りだったの。

ところがそこで、こういう予想外のアクシデントに出くわしたわけ。

 

一回バス乗っちゃったら軽く2時間は座りっぱだし、

座席でタンポンと格闘するのはね、さすがに無理があるわけ。 

しかもタンポンもね、幽閉されてからかれこれ5時間くらい経ってるわけだし、

もうね半分、岩屋の中の山椒魚みたいになっちゃってるわけ。

山椒魚は悲しんだ。奇遇だねー、わたしも悲しい。

 

つーか実際のところ、岩屋の中の山椒魚っつーよりか、

天岩戸の中の天照大神くらいのスケールと化してるに違いないの。  

そういえば朝からお腹の調子が神々しいなと思ってた。

 

古事記ではなんだっけな、イザナギノミコト?が顔かどっかを洗った拍子に

なんやかんやで生まれたのが天照大神だったような気がするけど、

わたしくらいの聖母になるともうね、まさかのオメデタ。痛恨の懐妊。

ほんと、帝王切開で引きずり出してやろうかって百回くらい思った。 

 

突然そんなとこにね、連合赤軍ばりの篭城キメ込まれたらさ、

こっちはもうどうしようもないわけ。

場所が場所だから、こっちも国一つ落とすくらいの気合いが必要になってくる。

つって、再度ガサ入れを強行すべく息を整えてたんだけど、

なんつーか、もうそろそろバスに乗らなきゃいけないっぽい時間になってた。

 

もうね、やれることは全部やった。ちょっと四股踏んでみたりもした。

こっちは万策尽きて満身創痍なのに、一向に出てくる気配がない。

凄まじい陣痛に耐えてんのに、出産予定日がまるで未定。

 

やむなくバスに乗り込み、車窓を流れる千里津雲台の住宅街を眺めながら、

このまま全身の血をタンポンに吸い尽くされて死ぬのかな…と

現実味を帯びはじめるエナジードレインの恐怖。

 

もしも今、何らかの天災に見舞われてバスが横転して乗客が全員死んだら、

わたしはタンポンが入ったままの状態で死んで、

お通夜で弔問客にタンポンが入ったままの死に顔を見られるのかと思うと

死にたいような絶対死にたくないような複雑な気持ちになった。

生きる理と書いて、生理、とか考えると余計やりきれなくなってきた。

 

難波から2時間走ったところでパーキングエリアに停まったから、

またトイレの中でタンポンの掘削に挑んだけど惜敗。

タンポンの寿命まで残り1時間少々というところ。

 

バスに戻り、トンネルを抜け、雄大な深緑の山並みを見つめながら、

このままタイムリミット過ぎて取れないままになったらどうなるんだろう…

つってね、めちゃくちゃブルーになった。

 

8時間という法定労働時間を超えてなお酷使され、

最悪の状況で美少女の体内に取り残される略してサビ残を強いられ、

汚れ仕事を独りで黙々とこなし続けるタンポンの

身の上を思うと泣けてくる。涙腺にタンポンを詰めたい。

非倫理的で不条理な労働社会、ほんと血も涙もない。血と涙以外ない。憂鬱だ。

 

そこから30分ほど走って降車駅で降り、足早にバス停から至近距離にある実家へ。

難波からの道すがら、ほとんどタンポンのことしか考えてなかったけど

今回の帰省の目的はあくまで高認試験の合否確認。

それっぽい簡易書留を郵便受けから抜き取りおもむろに封を切り、

素早く中身に目を通す。

 

結果、8科目中8科目合格。

もうね、そうだと思ってたー。

知ってたー。

あんだけスラスラ解けたのに合格点取れなかったらやばいもんなー。

でも、今はもっと取れなきゃやばいもんがあるんだよなー。

 

ホームにてコンティニュー、本日三度目の激突。

でもまぁ、さすが実家。

地の利を活かした落ち着いた試合運びと、高校卒業程度の学力を有する者らしく

ありとあらゆる道具をテクニカルに駆使することで、

ついにタンポンを引っぱり出すことに成功した。

使用時間の限界5分前、ほぼブザービーターでの摘出。

 

はぁー、安心したぁー。

そうだよね、たまにはタンポンが取れなくなることもあるよね。

ちょっとした乱数調整みたいなもんだよね。そんな日もあるよね。

んー、ほんとにほんとに取れてよかった。

 

ふははは、高認だろうと何だろうと、

このわたしに取れないものはないのだー。

次は大学合格を掴み取ってやるのだー。

そうと決まれば大阪に帰って、また勉強漬けの生活に戻るのだー。

つって意気揚々、大阪にとんぼ返りするつもりだったんだけど、

今は、帰りのバスの予約が取れなくて泣きそう。